―――――僕は君が好きだよ。

あ、赤くなった。え、何?別にからかったわけじゃないんだけど、なぁ。僕はいつだって君が好きだよ。だからこうして言っているんじゃないか。出来るだけ、僕は言葉にしておかないとね。君って鈍くさいし、自分に向けられる感情には鈍いし。ほら、そんなに頬を膨らませないの。可愛い顔が台無しだよ。…まぁ、そんな千鶴も可愛いんだけど。
だから頬を膨らませたままでもいいけど、やっぱり僕は笑った千鶴が好きだなぁ。ね、笑って。僕のために。……あれ、笑ってって言ったのに赤くなっちゃった。どうして?“総司さんのいじわる”って。そんな別に意地悪したわけじゃないよ。千鶴が勝手に意地悪だと思っているだけじゃない。ぼくはただ単に笑ってって頼んだだけでしょ?
……あぁ、もう。嘘だよ。

ごめんってば。そんな怖い顔をしないでよ。僕が悪かったから。本当に悪かったって思っているかって?うーん、思ってないって言ったら千鶴は怒るでしょう?ほら、怒った。別に怒ってないって?じゃぁ拗ねた?“僕が意地悪だから”って。最初に僕に意地悪をしたのは君だよ。いつ、って。今だってそうじゃない。
君は洗濯物にばかりかまけて僕には構ってくれないし。こんなにも遊んでほしいのに。というか構ってよ、暇すぎて眠くなってきちゃったじゃないか。……。なに、その呆れた顔。
寂しすぎて僕が死んだらどうす…あぁ、もう。そんな顔しないで。ごめんね、冗談でもそんなこと言っちゃ駄目だったね。
浅慮だったよ。ほら、千鶴。不安そうな顔をしないで。君はそんなに僕を病人にしたいのかい?ここにきてから、咳だって出なくなったでしょう?大丈夫、だから大丈夫だよ。君がそんな顔をすると病人になったような気がするからやめてほしいんだけど。

ねぇ、千鶴。そんなに僕の事が好き?僕にいなくなってほしくない?それだったら、いい加減、僕に構ってくれると嬉しいんだけど。“それはだめ”ってどんだけ君は頑固なの。ねぇ、暇なんだってば。暇なの。あと少し?あと少しってどのくらい?さっきからずっとあと少しって言ってるじゃない。いい加減にしてよ。あと少しですからって。
…あぁ、もう。そんな顔をされたら待つしかできないじゃないか。もう、いいよ。しょうがないから僕も手伝ってあげる。ふたりでやれば早いだろうしね。なに、その意外そうな顔。屯所に居た時だって当番制だったんだよ?別に僕が洗濯できてもおかしくないでしょ。それこそ試衛館にいたころは……ううん、なんでもない。なんか昔の事思い出しただけだよ。

あー、もう、不安そうな顔をしないの。それにしても千鶴は本当に可愛いね。可愛くて、だから苛めたくもなるんだろうね。
うん?悲しいのかって。なんで急に?別に悲しくないよ。

ただ、

ううん、なんでもない。なんでもないよ。

……ね、千鶴。今日はいい天気だね。こんなに気持ちいい天気なら、きっと日向ぼっこしたら気持ちいいんだろうなぁ。
今日は、少し遠出しようか。もうそろそろ、蒲公英が咲いているかもしれないからさ。隠していること?
ううん、なんにもないけど?さ、終わったなら出かけよう。こんなに暖かいんだから、きっと良い夢がみれるよ。
ね、千鶴。
(………ごめん、ね)
え、風で聞こえなかった?そっか。いいんだよ、それで。 何て言ったか気になる?
ふふ、教えてほしい?君が大好きでだいすきで仕方がないって言ったんだよ。





(嘘を吐いてごめんね、愛してるよ)
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