空には、透き通るような青色が広がっている。 見ているだけで清々しくなるような青色は見ていてとても心地が良くて、気がつけば夢現。ぽかぽかとした陽の温かさに知らず、体が緩む。さぁ、眠ってしまいなさい と言わんばかりのその優しい誘いに私は抗わずに目を閉じた。風邪をひいてしまうかもしれない、と思いながらその魅惑の誘惑には逆らえない。ほんのすこしなら、と言い訳しながら欠伸をもらし、体を横たえる。 「千鶴」 縁側でうとうとと微睡んでいた私に「千鶴?」とその人は再び声をかけた。 「眠っているのか?」 眠っては、いない。夢と現実の狭間を彷徨い続けている。答えを返さなければいけないと思うのに、体は思うように動かない。千鶴、とそのひとはもう一度私の名前を呼んだ。その声が心地よくて、私は微笑む。千鶴、と静かに私の名前を呼ぶ穏やかな声が好きだ。私がここに居てもいいのだと思わせてくれるから、ここに居るのだと教えてくれるから。 「天気が良いから気持ちはわかるが、こんな所で寝ていれば風邪をひく」 窘めるような言葉とともに、そっと一さんは私の肩に触れる。その感触を感じながら、私の頬に躊躇いがちに触れてくれる指が好きだなぁと思う。まるで大切にしたいと言われているような気がするから。目を開ければ、一さんは「ようやく起きたか」とほんのすこしだけ呆れたように私を見た。私の姿を映す青色の瞳も、好きだ。まっすぐに見つめる眼差しには決して偽りがないから。ああ、私はこの人が本当にすきなのだと、改めて気がついて私は頬を緩めた。 「随分、楽しそうだな」 一さんは穏やかにそう呟いた。その声をうっとりと聞き、私は「そう見えますか」と笑った。 「何故、こんな所で転寝をしている」 「空を、見ていたんです」 「空を?」 一さんは上を見上げ「ああ、そうか」小さく口元に笑みを刻んだ。 「確かに、今日の空は綺麗だな」 「私、昼の空が一番好きなんです」 私の言葉に一さんは興味深そうな顔をした。何故、と言わんばかりの顔だなぁ、と思っていると一さんは「何故」と口にした。まさに予想通りの反応にくすくすと笑いを零せば揶揄されたと思ったのか一さんはほんの少しだけ拗ねたような顔をした。いつもは大人びた反応ばかりするこの人には、意外と子供っぽい所がある。(そういうところも、すきだけれど) 「一さんの目の色に似ているから、きっと好きなんです」 「…俺の?」 自然と惹かれるのだとそう言えば、まるで予想外の答えが帰ってきたとばかり一さんは驚いたような顔をした後に、恥ずかしそうに首を竦めてみせた。そのおろおろした一さんの様子に思わず吹きだせば、途端にむっとしたような顔をされる。一さんは何かを思いついたような顔をすると、私の好きな手で私の頬を挟み、私の顔を覗き込んだ。 「ここに俺が居るのだから、俺の瞳を見ればいいだろう」 藍色の瞳は、ほんの少しだけ悪戯めかしたような光が浮かんでいて。 (わたしのいちばん、好きな) |