彼と彼女と青空と


想像していなかったわけではない。
だって、つい先日までは敵として相対していたわけで、むしろ酷いことを散々されていたわけで、だからこそもしも、出会ったらどうなるかっていうのは解っていたはずだった。 事の始まりは、ゆきの母親が都と瞬に対して「ついにうちのゆきにも恋人が出来た」とのたまったことに始まる。 天海のことは、母には言っていたけれども、都と瞬には昔の事があったために言いだしにくかったのは、確か。 けれどやはりというかなんというか「まだ紹介するには早いから」とかそんなことをいって、誤魔化して、そうしてその場を切り抜けたと思っていたのはゆきだけで、どうやら瞬と都はゆきを尾行しいていたらしい。
(まさかここまでやるとは思わなかった……)
天海との待ち合わせ場所につき、天海がもうすでにその場所に居ることに慌てて走り寄った、その瞬間。
「へえ、ソイツがゆきの恋人なんだ」
と声をかけられた時には心臓が止まるかとおもうくらいに驚いた。そうしてこの後におこるだろう 騒動が予想出来て頭が痛くなった。ゆきの想像通り、その恋人が天海であると気がついた都は大きく頬を引き攣らせた。
「なんていうか、釈然としないのは何でだ」
「……」
都はそういうと、天海を睨みつけた。ついでに隣に立っていた瞬兄もしかり。あぁ、どうしよう。天海の方は特に気にしていないのか、面白そうに都たちを見ている。
「黒龍の神子と星の一族の少年ですか、元気そうでなによりです」
「何でお前が此処に居るんだ」
「ふふ、私の愛しい子がそう、望んでくれたので」
そういいながら、ごく自然に腰に手を回される。あぁ、どうしよう。思わず顔を引き攣らせてしまう。
「あ、天海、その……そんなに挑発しないで」
「おや、そんなことはしていませんよ。もしかして心配してくれているのですか、愛しい子。君は相変わらずとても優しいですね」
いやだからそうではなくて!
微妙にギスギスとした空気に渇いた笑いを浮かべることしかできなかった。だからこそ言いたくなかったのに!瞬にしろ都にしろ、ゆきに対して過保護すぎるきらいがある。もしも天海とそういうことになっていたと知った日には過保護に拍車がかかるような気がする。
「あの、皆…仲良く」
「出来るか!お前、何でわざわざ、ソレを選ぶ!?八葉が居ただろ!?」
「そうです。わざわざそんなリスキーを犯すだなんて危険すぎます」
「……」
散々な言われように天海の気分を害しているだろうかとゆきは心配していたのだが、どうやら天海は何も言わずにただ笑んでいるだけだった。その意外な対応にゆきは「天海?」首を傾げる。てっきり、都や瞬に対して嫌みだとかなにかを言って、火に油を注ぐのではないかと思っていたので。
「あの、ごめんね?」
「何を謝ることがあります。別段、私は構いませんよ」
「そう、なの?」
「えぇ、むしろ心地よくもある。今、この場で何を、どう言われようとも……」
天海はそこまで言って、そうして目を細めた。一瞬、それにデジャヴュを感じてゆきは目を瞠る。どこでみたっけ。あぁ、そうだ。確かアーネストがよくこんな顔をして……。はっとゆきが気がついた時には遅かった。

「―――――――ふふ、負け犬の遠吠えにしか聞こえませんね」
「天海!」
「なんだと!?この野郎、さっさと表に出ろ!狭間に送り返してやる!」
「俺も手伝います」
「あぁああ、もう……」
やはりというかなんというか、やっぱり天海は天海だった。ゆきではもう収集つかぬその騒ぎに心を決める。これからは、出来る限りこの面子で鉢合わせないようにしよう、そうしよう。





天海EDでも瞬兄はいないのかどうかはわからなかったけれど、私の中では居るっていうそういう設定でいこうと思います。
いいんです、だってそれが創作の醍醐味なんだから!
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