しあわせが通り過ぎたあと(ED後)



いつか貴方にも好きな人が出来るのかもしれませんね、なんてゆきの恋人であるはずの瞬がそういうからゆきは思わず唇を尖らせた。
「私は、瞬兄が好きなの」
「ありがとうございます」
穏やかにそう笑って、けれども寂しい言葉を瞬は取り消そうとはしないことをゆきは知っている。独占欲は強いほうなのだと、実はあの異世界で福地の貴方に対する言動が気に食わないのだとこっそり教えてくれた瞬は、けれども時折全てを諦めたような、ゆきを手放す覚悟みたいなことを口にすることがある。ゆきはそれがとても気にいらないのだ。
「私」
「はい」
「いつか、おばあちゃんになって、瞬兄にほら、私はずっと瞬兄が好きだったでしょう≠チて言うんだから」
「……」
瞬は目を丸くして、ゆきを見つめていた。それから、ふとまるで花が咲いたように(男の人にこんな表現をするのはどうなんだろう)(けれどその表現が似合うほど瞬は美しい男性だったから)微笑を浮かべる。その笑みは、ゆきたちがあの違う世界から帰って来てから瞬がみせるようになった笑みで、ゆきがいちばんすきな表情だった。

「では、俺はその日を楽しみにしています」
「うん」

瞬の言葉にゆきは笑って楽しみにしててね、とそういった。出来るのならば、これからもゆきの言葉で瞬を笑わせてあげたいな、なんてそんなことを想いながら。



しあわせが通り過ぎたあと
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