恋は不毛、愛は盲目、そうして彼は道化となる

容姿は端麗、頭もそこそこ。一見、全てを諦めているような、妙に冷めているようにも見えるくせに、そのくせお人好しで誰よりも優しい。意外と突っ込み気質で、しっかりとしている割には天然で、そうしてお節介。
以上が、白原尋也によって行われた依藤亜貴の人格評論だ。辛辣すぎる評価のようにも思えるが、これでも多分、甘い方だと考えられる。白原は、いつだって彼女に対しては対応が甘くなるのだ。誰だって、好きな人には甘くなるものだから仕方がないとは思うけれど。そう、白原は亜貴が好きだった。好きだとそう気がついたのはいつだろう?自分でも不思議に思うほど、いつの間にか彼女のことが好きになっていた。
「我ながら、不毛だよね」
「恋患いかい?青少年!」
「……」
パシン!と容赦なく白原の背を叩いた紺青に無言で凄んでみせれば「おお、こわ!」と大げさな仕草で紺青は身を引いた。
「君、出会い頭に人の背を思い切り引っ叩くだなんて、ほんとうに失礼だよね」
「あらやだ!折角亜貴ちゃんのことを健気に考えているだろう白原くんの相談に乗ってあげようと思ったのに!」
「別に考えてないよ」
「ふぅん、そう」
「……何?」
「いんや、別にい?そっか、それならこの情報は烏羽っちにでも教えてあげようっと」
そういってにんまりと笑って踵を返そうとした紺青の襟首を咄嗟に掴む。うえ、とまるで蛙を足で踏みつぶしてしまったかのような音に白原は「君って、女の子らしくないよね」と眉根をよせてみせた。
「何だい、気になるから引き留めたくせに白原っちってば!」
へらっと笑った紺青に白原は「さっさといいなよ」と促してみせた。
「今、亜貴ちゃんが真朱先生に仕事を押しつけられて教室で悪戦苦闘しているんだけれど」
「……またか」
「白原っちとしては都合が良いでしょう?亜貴ちゃんと二人っきり!二人の関係を縮める良い口実なんじゃないの?」
「そんなことで近付けるのならば苦労はしていないんだけれどね」
言いながら、教室の方向へと歩き出せば紺青が「素直じゃないなァ」と呟く声が聞こえた。別に誰も手伝いに行く、なんて言っていないだろう。心の中でそう言い返しながら、でも、結局は手伝いに行くんだから何もいえないんだろうけれど。でも、彼女の声が聞くための口実が出来るんだからそれもいいかな、なんて思うのは惚れた弱みなのかもしれない。

 

パニパレはもっと評価されるべきゲームだと思っている。っていうかなんであんなにサイトが少ないのかが不明。
凄く面白いのに。物凄く面白いのに。あのゲームは、中々に名作だったと私は思うわけで。白原くんが1番好きだ、ばかあ!!

Image by neohimeism  Designed by 天奇屋
inserted by FC2 system