よくもまあ招かれもしないのに(ミステリアス)<


「そういえば何で僕を選んだの?」
不思議そうな顔をしてミスティさんは私にそう尋ねた。一瞬、何のことだろうと思ってから、そうして彼が尋ねたのが去年行った彼の《架空彼氏》についての質問だということに気がついた。4月。恋ができないと私が黄色ハンカチを結んで、それを合図に現れた恋愛番長が告げたのは「この1年、エンジェルが恋をできるようにここにいる7人の中から1人選んでもらってその相手と恋愛指南を行う!」ということだった。その7人いるなかで、ミスティさんを私は選んで、そうして彼に恋愛指南をしてもらいながら恋の楽しさだとかを教えて貰ったのだ。1年、という限られた時間の中で私は彼に恋をして、そうして信じられないことに彼も私が好きだといってくれた。だからこうして1年が過ぎても私は彼と一緒にいるのだけれど。そこまで考えて、私は何故彼を選んだのかを思い出そうとした。
「えぇと」
春、穏やかな季節。真っ青な青色をした空に白い服、穏やかな微笑を浮かべていたのを覚えている。不思議な事を言っていたのも。
「……あ」
「ん?」
思いだした事実に思わず声をあげて、それから慌てて口を抑えた。けれども一度出た声は元には戻せない。ミスティさんは私の顔を覗きこむと、
「どうして?」
と再び聞いた。
「あの、言わなきゃ駄目?」
「……僕には言えないんだね…」
途端に悲しそうな顔をされて、うろたえる。きっとミスティさんは私がミスティさんの悲しそうな顔が苦手だということをしっていてこんなことをするに違いない。
「そ、そんなことない!……けど」
「けど?」
「呆れられそう?」
「そんなことはないよ」
だから教えて、と吐息交りに問われてしまえば白旗をあげることしかできなかった。あのね、そっと告げる。
「最初は優しそうな人だなあって思ったからかなって思ったんだけれど」
「けど?」
「多分、あの、多分だけどね。きっと、私、もうその時には」


「恋に落ちていたんだと思う」


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