殉死の口実をさがしただけ(ミステリアス) 「ミスティさん、見てください!」 ぱっとまるで花が咲くように綻ぶかのように笑う彼女の姿にミステリアスは笑うと、彼女が示す先へと視線を動かす。そこには夕闇に輝くひとつの星。 「一番星です!」 「ふふ、僕よりも先に見つけるだなんて凄いですね。貴方にも星の声が聞こえるようになったんでしょうか…」 「そうかもしれないね」 そうだったら嬉しいのになあ、と彼女は言いながらミステリアスの手をそっと握った。小さな掌は温かい。握り返せば、彼女は嬉しそうな顔をした。とても柔らかく微笑む彼女が、ミステリアスは好きだ。勿論、目まぐるしく変わる表情も、空を見ているようで好きだ。彼女に関わると、大抵が自分の中で好きに変わっていくような気がしてミステリアスは一人、苦笑した。案外、自分は単純な人間だということを思い知らされる。 「今日は何があったんですか?」 「今日はね、大学で新しい友達が出来たの」 高校を卒業した彼女は、大学へと進学した。ミステリアスの影響なのかもしれないが、天文学部へと進んだのだとそういって微笑った。高校の時にミステリアスと一緒に【地獄の猛特訓】をしてから勉強が嫌いではなくなったのだと彼女は笑いながら話していた。昔の彼女からは想像が出来ないくらいに彼女は変わっている。変わり続けていく彼女が、ミステリアスは大好きで、けれども同時に不安になる。もしそういったのならば彼女は怒るだろうか。星も空も、いつだって手が届かない遠い場所にある。それと同じようにいつか彼女が手の届かない場所へと行ってしまうのではないかと、恐ろしく感じることがあるのだ。優しい彼女の声に耳を傾けながら、そんなことを考える。どうしようもない思考だ。優しい彼女が、ミステリアスを置いて行くはずがないのに。あぁ、それに 「……離せそうにないな」 「え?」 「なんでもないですよ」 「…?変なミスティさん」 「変って…酷い言いようだな」 困ったように肩を竦めると彼女はくすくすと笑った。それに合わせるように彼女と繋がっている掌が揺れる。それを見ながら、ミステリアスは微笑った。星や空はこの手から程遠いが、彼女の手はすぐ傍に。きっと、それはずっと続いて行くのだろうから。 |