残り滓で造った時計(セクシー番長)


女の子っていうのは、本当に変化する生き物だなって最近良く思うようになった。4月から【架空彼氏】としてひとりの少女と付き合いはじめた。初めこそはこちらの一挙一動に真っ赤になって動揺して困った顔ばかりしていたはずの女の子はけれども付き合っていくうちにセクシーになれて、笑顔をみせるようになっていった。男は狼なのだと冗談めかしてそう言っても笑って流すようになったくせに、けれどもこちらが可愛い≠ニそういうだけで嬉しそうな顔で笑う女の子。はじめこそ、しっかりとした一線をひいていたはずなのにけれども彼女が成長すればするほどにその線はうすらぼんやりしたものになっていった。
手放したくない、とそう思ってしまうようになってしまったのだ。恋愛番長のうちの一人であるはずなのに、相談相手の女の子に落されるなんて情けないの一言だ。セクシーだってそう思う。だがしかし、男としてはここまで【自分好み】に育てあげてきた女の子を他の男なんかにやるのはどうかと思うわけで、
「セクシーさん?」
「……ん?」
どうやら考えごとに没頭しすぎたせいでぼんやりしていたらしい。袖を引っ張られて、我にかえった。
「あの、大丈夫ですか?」
「ん、だいじょうぶ。ごめんね、レポートで寝たの夜遅かったのよ」
「言ってくれればよかったのに」
こちらを見つめる彼女の目の奥にあるのは心配そうな光。でもそれは明確な好意の上で成り立つものだということをセクシーは知っていた。知っているからこそ、もどかしくも何も言えずにただ笑う。
「お前は、俺に会いたくはなかった?」
「……会いたい、けど」
でも、無理をさせるのは嫌だから。そう言って俯いてしまった少女の頭を撫でる。いい子だ、彼女は。だからこそ、こんなにも割り切ることができずにいるのだろうとも思う。1年という時間はとても長くて、そうして短い。さらりとセクシーの手をすりぬけていく髪に、時間の砂を重ねて目を瞑った。


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