夢と夢と夢から覚めた夢(←ドS)


ツンデレ*主人公だったんだけれど、死んじゃって、転生して次の主人公になって恋愛番長呼び出したら間違えてドSさん選んだはずで、そうしてツンデレ君じゃないことに気がついて愕然とする主人公ちゃんの話。


「この恋愛音痴っ!」
言われた瞬間、その懐かしさに一瞬、時間が止まったようなそんな気がした。私が止まったのに気がついたのかドSさんは「なに呆けてやがる」と嫌そうな顔をした。どうしてだろう。なんでこんなにも懐かしいと思ったのか。けれど、懐かしいと思うと同時に何故か胸の痛みが走ったそんな気がした。違う、とも。いつだって同じように俺の言うことには全て従え!要望か希望以外は俺に声かけんな!≠ンたいなことばかり言ってるくせに意外と面倒見がよくて、優しくて。
「……っ、」
ぱたん、と涙が落ちた。悲しくて、辛くて、そんな気持ちなんて何もなかったはずなのに、けれどもどうしてか胸が締め付けられるようなそんな気がした。
「ちっ、おい、何を泣いてやがる」
面倒だな、とそう言ったドSさんにはっと我に帰れば、言葉の厳しさとは裏腹に困惑したようなそんな顔をしているような気がした。
「す、すいません…なんか、懐かしくて」
「懐かしい?何で懐かしいのに泣いてるんだよ」
「わからないんです。でも懐かしくて、懐かしいのに胸が締め付けられるみたいに苦しい…」
なんなんでしょう、これ。ごしごしと目元を擦っても擦っても中々涙は止まらない。はらはらと涙が流れて、それで。ふいに腕を取られる。何かと思えば、どこから取り出したのかドSさんはハンカチを私の目元に押し付けた。
「擦るな、赤くなってる」
「あ、ありがとうございます」
どうしてだろう。その優しさにこれじゃないのだ≠ニ泣いている私が、いるようなそんな気がした。私はもっと不器用な指を知っているはずなのに。



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