必要ないもののはなし(ミステリアス主人公←ドS)

「いつかきっと。きっと、出逢うことが出来ますよ」
俺ではなく、偽物である恋愛番長の手を取った女はそういうと微笑んだ。彼女の選んだ番長はミステリアス番長≠セった。何を考えているかがわからない。前まではなにをやっても不思議としかいいようができないUMAの隣で戸惑ってばかりいた少女はけれど、最近になって楽しそうに笑うようになった。その変化はきっとUMAの御蔭であるんだろう。けれど、正直なところ、彼相手では不安にはならないのかとそう聞いた所、彼女はほんの少しだけ目を細めるとこう言った。
「確かに不安に思うことはあります。昔はずっと不安だったんです。でも、それよりも知りたいって思うようになりました」
穏やかにそう答えた彼女の顔はもう恋する少女≠フものだった。彼女の願いは既に叶っていたんだろう。
「はっ、あのUMA相手によくそんなことを言えるもんだな」
「ふふ、ありがとうございます」
「別に褒めてねえ」
嫌そうな顔をしてそういったのに彼女はただ笑うだけ。
「私、最初はどうなるかと思ったんですけれど。でも、こうやってなんとかなっているのは周りの皆の御蔭だっていうことも知りました。ドSさんにも、いつか御礼を言わなきゃって思っていて」
「ぁあ?別に俺は何も……」
「いいえ、十分に。十分に私は貴方から色々なことを教えてもらいました」
言いかけた台詞は真っ直ぐすぎる視線に呑みこまされざるをえなかった。
「意外と真面目で、人のことを良く見ていて、優しいって私は知っています。でもきっと、もっと貴方のことを理解してくれる人がいつか現れるんでしょうね」
「……。はっ、馬鹿な奴だな」
「ふふ」
「……そうだ。ひとつ、教えてやるよ」
「なにをです」
「男に嘘をつかせないようにする方法だ」
「……?」
「お前がソイツの事をただ全力で信じてやればいい。そうすれば嘘吐く時に男は罪悪感が顔に出て、それこそわかりやすくなる」
「あの人の場合どうでしょうねえ」
そういいながら目を細めた少女に「さあな」とそういうと彼女は目を細めた。きっと、お前なら大丈夫だ。言葉にはしないけれども、心の中で思う。どんなに不安だったとしても、相手を責めることなくただ相手の全てを信じているのを俺は知っているから。……そんな相手にどうしてこんなことをいってしまったのか。

「まあもっとも。お前にはいらない知識だっただろうがな」




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