罪悪は腹の底で眠る(癒し)

それに気がついたのはたまたまだった。癒しの恋人である少女と癒しの兄であるドSとは案外、仲が良いべったりとくっつくわけではなく、お互いに時間がある時に良く喋っているようだった。一般的には自分の身内と恋人が仲が良いのは好ましいことだと思う。だがしかし、それが男兄弟となると話が別だ。面白くない。交友関係に関しては口を出すつもりはないが、けれど、

「……。仲が良いのかい?」
「え?誰と誰が?」
「君とドS兄さんと。よくしゃべっているだろう?」
ぎゅう、と後ろから彼女を抱き締めながらそう問えば「そういえば最近はそうかも」と彼女は答えた。
「意外と真面目っていうか、穏やかっていうか。ドSさん自身は他人のことを良く見ているし、優し…いたたっ!いたい、癒しさん痛い!痛いっていうか苦しい!」
「苦しくしてるんです」
「うう、心なしか怒ってるような気もするし、な何で?……あ、嫉妬、とか?」
はっとした様子で癒しの顔を見上げた少女に「別に怒ってないよ?」と答えれば彼女は顔を引き攣らした。嫉妬の部分は否定はしない。だって嫉妬しているから。
「ドS兄さんは恰好良いだろ?」
「うん?」
「兄さんは兄さんで君を気にいっているし」
「そう?」
「そうだよ」
「多分、癒しさんの恋人だからまあまあ良くしてくれるんだと思う。弟大好きだもん、ドSさん」
「……………」
「いたっ、いたた!癒しさん怒るなら言葉で怒って!痛い!苦しい!」
「全く」
もしかしたら自分の事よりもドS兄さんのことを理解しているんじゃないかと馬鹿な想像をしてしまう。いつの間にこんなに仲が良くなったのか・。はあ、と溜息を吐いて彼女を解放すると、やりすぎたのか涙目になっていた。
「えぇと、それで…?」
「あぁいや。ドS兄さんについて随分詳しくなっているから少し気になっただけだよ」
「そう?でも、うん、なんか癒しさんに似てるなってやっぱり思うよ」
だからつい見ちゃうのかもしれない、と照れたように笑う彼女が可愛かったから。まあ、今回だけは赦してあげようかな、なんて思う自分はやっぱり彼女に甘いのかもしれない。


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