きみは優しすぎるのです(ミステリアス番長)
(貴方の口付けで私の呼吸を止めてください、の続き)


その紙片を見たときの気持ちはなんと表現すればいいだろう。焦り、怒り、悲しみ、そのどれもが正しいような気がしてそうして違うのだろうと思う。昔から彼女はどこか優しいところがあった。誰かの意見を尊重して、自分の意見を押し殺す。ある意味で美徳ではあるのだろうけれど、それは恋愛においては長所とだけはいえなかった。
「あの、ごめんなさい・・・」
「別に君は悪くないよ」
そう、悪くない。他の男と話すだけで怒るような器の小さい男ではないつもりだ。多分、相手が悪いというのもあるのだろう。もしかしたら、彼と君は少し似ているような気もするから。君だったら、彼のことを理解できるようなそんな気がするから。だからきっと、こんなにも焦るのだ。彼女の困ったような顔をみるのが申し訳なくなって、抱きしめた。たとえ、どんなに彼が彼女のことを欲していたところで自分はこの腕を放すことができないのだから答えはたったひとつだけかもしれなかった。




inserted by FC2 system