思い出を積み上げたらこの隙間は埋まりますか

たかが1歳、されど1歳。

僕と彼女の歳の差。彼女は“そんなこと別にきにしなくてもいいんだよ”と笑うけれど、僕にとっては死活問題。だって、彼女より僕が1年早く生まれたから、僕が彼女が1年遅く生まれたから。それだけの理由で、僕たちは離ればなれになってしまう。修学旅行だって一緒にいけないし、まわれないし。年の差なんて、別にたいしたことないですよ、なんて。そんな恰好つけなことをいいながら、実は凄く気にしていたりするし、物凄く悔しくなる時もある。それはとても恰好悪いな、と思うから表に出さないだけ。だって、僕は彼女と同じ歳ではないというのは彼女と同じ景色を見られないということ。学校というものは学年別に別れていて、どうやったって追いつけるものじゃない。彼女と同じ景色をみたい、と思ってもそれは僕のひとりよがりで、どうやったってみられるものじゃない。いやだなあ。
「――――――狡いです」
「うん?」
「だって、宮地先輩も犬飼先輩も、先輩と同じ景色が見られるのに、僕は見られないだなんて、狡いと思いません?」
ぱちぱち、と先輩のおおきな目が何度も瞬きをした。意外そうな表情に僕は頬を膨らませた。その様子にふふ、と先輩は笑う。
「梓くんでもそんなことを思うんだね」
「いつだって思ってますよ。だって、学内でみかけると先輩の横にはいつも…えぇと、誰でしたっけ。確か…背が高くて、いつも笑っている…」
「錫也のこと?」
「そう、東月先輩でしたっけ?何だか凄く僕のことを敵視しているような気がします」
「え、まさか!錫也は幼馴染だよ?」
くすくすと面白そうに笑う先輩に、ほんの少しだけその“幼馴染”に同情する。あーあ、本当に可哀想に。ずっと昔から恋心を抱いていたはずなのにこんな風に思われるだなんて。まあ、のうのうと彼女の傍にいて、呑気に笑っているから掻っ攫われるんですよ、なんて優越感も抱く。とはいうもののその“東月”先輩は面倒だ。事あるごとに自分が先輩の中でとても大きな存在であることをわかっていて“牽制”をしかけてくるんだから。
「ま、僕だって負けるつもりはないんですが」
「負けるつもりがない…って、誰に?」
心底不思議そうな声ににこりと笑って、人差し指を唇にあてる。
「秘密です」
途端にほんの少しだけむくれた表情になった先輩が可愛くて、思わずキスをする。途端、真っ赤になった顔に僕は笑った。

「先輩って、ほんとうに可愛い」

そう言って、遠くにある(人影先輩は、きづいていないだろうけれど)にみせつけるように、柔らかな頬にキスをもうひとつ



 

初めての梓。そしてナチュラルに錫也→月子になったというね
梓が何だか偽物っぽいのは 今現在お酒が抜け切れていないからだと思われ、る。ぬーん!!

Image by neohimeism  Designed by 天奇屋 Title by 群青三メートル手前
inserted by FC2 system