狭い世界に押し潰される

「あ、月子だ」
屋上、ぼんやりと夕焼けに染まる校庭を見ていると哉太が唇を開いた。
「え、どこ?」
「ほら、あれ」
そういって指差した方向に見えるのは月子と…
「……」
「あー、錫也?」
まずい、といわんばかりの表情を浮かべた哉太を横目に錫也は月子と並ぶ不知火を眺める。二人は何か話していて、月子は何が楽しいのかにこにこと笑っている。ぎしり、掴んでいた手すりが鈍い音をたてた。

月子が笑っていると安心する。その笑顔を見る度に愛しいと思う、だからこそ、苦しいと思うのだとはわかっているけれど。にこにこと笑う月子の笑顔を見て、安心するけれど、それと同時に壊してしまいたい、と思うのはどうしてだろう。この笑顔を守りたいと、確かに自分はそう望んでいるはずなのに。それだというのに、壊したいとも思ってしまう。彼女を傷つけて、そうしてずたぼろにして立ち上がれないくらいにしてやりたい、そうしてそんな彼女を甘やかして、自分だけのものにしてしまいたい。我ながら、病的な考え方だと思うけれど。
「――――――――――やだなあ」
自分が物凄く汚い生き物になったかのような気分になる。いや、まさにそれが本当の自分の姿かもしれないけれど。ああ、きっとそうだろうな。それを彼女に悟られないように穏やかな話し方と笑顔を手に入れたんだろうから。そんなことを思い出しながら、ふいに食虫植物を思い出した。綺麗な花弁と甘く薫る馨りで餌をおびきよせて、ふらふらとちかよってきた虫をぱくりと食べてしまう。成程、もしかしたら自分に似ているかもしれない、と納得する。あそこまで毒々しい感じではないとおもうけれど。

「す、錫也?」
「うん?なんだい、哉太」
「いや、なんだか物凄く怖い顔してんぞ、お前」
「え、そう?」

笑顔を浮かべていたつもりだったんだけれど、というと「いやいやいや!」と哉太は顔を引き攣らせた。
「不知火先輩が気に入らないっていう錫也の気持ちもわからないでもないけどさ、あれは仕方がない事だったんじゃね?」
「……別に俺はそれが気に入らないわけじゃないんだけどね」
「え?」
頬杖をついて、あの人と月子をみていると月子がこちらに気がついて大きく手を振ってきた。それに笑顔を浮かべて振り返すと横で哉太が「おいおい」と苦笑したのがわかった。不知火もこちらに気がついたのか、ほんの少し気まずそうな顔をする。

「きっと、誰も悪くないんだろうけれどね」

ぽつりと呟いた言葉は、風に攫われた。



 

悪いのは悪女な月子たんですね、わかります(^p^)
というかもうそろそろ錫也がマンネリ化してきました。あああぁぁぁあああorzいやでも好きなものを好きなだけ書くのは信条なので あえて無視して書きつづけるよ!!!(`・ω・´)シャキ‐ン(人はこれを開き直りといいます)それにしても錫也はおいしいなあ。むしゃむしゃ。
早くアフタースプリングが発売すればいいのにっ!!

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