知らない振りで、僕は君の傍に居続ける


さわり、風に乗って賑やかな声が響いた。ぴくん、と月子は背を伸ばして、そうしてその声の聞こえた方へと顔を向ける。そうして、視線がその人の姿を追う。
ごく自然に、惹かれるように、じっとみて、そうして、くすりと柔らかく笑う。あ、恋している顔。こんな時、月子は女の子だなと思う。思って、そうして悲しくなる。それは今、自分の想いが一方通行でしかないということなので。それはとても悲しいことだ。悲しくて、辛い。けれども、彼女のそんな柔らかい顔を見れたことはとても幸せなことなんだと、そう思った(違う、思いこんだ)

「月子」

そっと彼女の袖を引き、彼女の意識をこちらへと押し戻す。彼女はその行動に、夢から覚めたような顔をして2、3度瞬きを繰り返した。
「どうしたの、羊くん」
いつもの、彼女の優しい笑顔。とても可愛い、でもその笑顔がなんとなくもやもやする。ね、月子。なんで僕には笑ってくれないの?僕の言葉に月子は酷く戸惑ったような顔をした。

「笑っているよ?」
「違うよ、そうじゃなくて」

なんで、あの人に向けるみたいに笑ってくれないの?

その言葉は喉の奥へと仕舞った。だって、それは子供の我儘だ。僕が好きな月子の好きな人はあの人。あーあ、ややこしい。恋愛なんて、もう少し単純に出来ればいいのに。あの人はこの子が好き、で終わってしまえばいい。

そこで相手の気持ちがどうだとか、相手にとっての自分の存在だとかを気にしてしまうなんてめんどくさい。そもそもの話、この気持ちはもっと神聖なものだったはず。初恋。きらきらとしていて、そうしてとても綺麗な想い出。それがこんな風に泥にまみれたように汚い気持ちになるだなんて誰が想像できただろう。それくらいならば捨てたほうがまし、そう思えるのにどうしても捨てることなんかできなくて。

「羊君?」

不思議そうな声、その無防備な頬に唇を落として(あ、顔が真っ赤)僕は我儘を飲み込んだ。


 

羊は誰よりも月子のことを本気で考えていそうな気がする。あ、いや錫也とか哉太も考えているんですが、基本的には自分がどうみえるかを 気にしていそうな気がする。というか本気で羊は王子様だと思っている。今気がつくんだけれど騎士って守るもので、御姫様とはくっつけないんだよね、普通は。 と思ったらふおおお!ってなった。夜中のテンションで後書きを書いているからなんだか日本語が可笑しい。いいや、どうにかなるさ(現在午前4時)

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