ぐしゃっと丸めて捨ててしまいたい、こんな感情は

大学卒業後は、錫也とも月子とも違う道をとった。幼馴染だからといってずっと傍に居なければいけない理由もなかったし、そうして付き合い始めた二人を邪魔するのもどうかと思ったのも理由のひとつだ。そうして、仲のよさそうな二人に見せつけられるのも嫌だったというのも、ほんの少しだけれど、ある。結果、これでよかったとも思っている。天体写真を撮るのは好きだったのもある。だから、きっと間違っていなかったのだ。

初恋は実らないとはよくいったもので、哉太にとってもそれは同じだった。別に哉太がいつも傍にいる月子に恋をすることは可笑しいことじゃない。けれども報われるかいなかといわれれば、それはとても低い確立だった。ただ、それだけ。それを悲しいとは思わないし、思ってはいけない。そもそも、このいつ壊れるかもわからない体では、誰かを好きになって、それに報われたいだなんていう資格はない。せめて、哉太に出来るのは、彼女の幸せを願うくらい。だからこそ、錫也と月子が付き合うという結果は哉太にとってとても良いものだ。幸せなものだ。だって、錫也だったら絶対に月子を幸せにしてくれる。それに、錫也も哉太にとっては大切な人だ。だから、
「誰が言ったんだろうなあ。初恋は実らない、なんて」
夜の空を一人仰ぐ。一人で仰いでも、二人で仰いでも星の輝きなんてあまり変わらないはずなのに、どうしてかとても寂しくてたまらないような気がした。
「幸せなら、それでいい」
彼女の笑顔を思い浮かべて、哉太は目を瞑った。彼女を一人占めするのは、もう赦されないけれど、それでも、これくらいは、赦されるだろう。ずきり、と痛む心臓は精神的になのだろうか、それとも己の体をむしばむ病のせいか。は、と痛みを逃すように息を吐き、蹲る。そうして、結果、自分の体を支えきれなくなって地面に寝転がるはめになった。自然、空が哉太の目の前に広がっている。
「………遠い」
それは彼女のことだったのか、それとも星のことだったのか。
遥か彼方の空へと手を伸ばし、それが届かないことを知ると哉太はその掌で目蓋を覆った。




 

リクエスト「哉太の片思い的な切ないヤツ」でした。切ない…切ない?まあ、一応。なんだかこう、上手く文字が作れていないような気がしなくもないですが(笑)哉太は可愛い。


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