やわらかさは畏怖の対象

この世界はキミが生きていくにはあまりに醜すぎるのではないだろうか。

錫也にとって月子という少女は綺麗すぎて手に負えないような所があった。幼い頃から庇護し、綺麗なものしかみせなかった。それでいいと思っていたし、今となってはそれでよかったと思っていた。彼女はいわば、温室の花。錫也が手に塩をかけ、美しく咲くようにと大事に、大事に世話をしてきた。その温度も、水の頻度も、全てが計算されたもので一歩間違えばそれはすぐに枯れるべきもの。そうしてそれは、錫也という庇護者を失ってしまえば枯れるだけの徒花。
そうなるように、育てた。それしかできないように、育てた。自分勝手で身勝手な男。だから彼女は被害者だ。恨むべきは錫也、けれども錫也を失ってしまえば彼女はただ死ぬだけ。 なれば、その憎悪は愛へと変換される。それが人間の不思議な所である。

「何、今度は心理学の本?」
「うん?」
ひょいと覗き込んできた月子に錫也は目を細めて、彼女が見やすいようにタイトルを掲げてみせる。
「えーとなになに児童教育心理学≠チて、どうしたの」
「なんとなく。子供の教育って大事だとおもわない?」
「先生になりたいんだっけ、錫也」
「別にそういうわけじゃないけれど」
「でも何か似合うね!」
「オカンだからって言ったら怒るぞ」
「自分で言ってるじゃん!」
月子はくすくすと笑って、それから首を傾げた。錫也の花、温室の花。けれど、もしかしたら彼女が錫也なしではいきていけないと錫也が思っているだけで、実際は彼女は錫也が居なくなっても生きていけるのかもしれない。わかってはいたけれど、だけれども、どうしたってそんな切ないことは考えられなくて、だから錫也は錫也自身でいいきかせる。きっと月子は錫也がいないと生きていけない、と。

「将来、必要になる知識だなあって思ってさ」
「へ?」
「だって、子供を育てる時に必要だろ?」
「……今からそんなことをしてるの、錫也…」
「早くても損はないだろ?」
にこりと笑ってそうのたまった錫也に月子は絶句しているようだった。何を言えばいいのか、迷ったように視線を揺らし「そうかもね」とどこか遠くを見ながら小声で呟く。全く、正直だよなー、お前って奴はと笑う。
「きっと、月子の子供ならかわいーんだろうなー」
「…自分の子供なら可愛いんじゃない?」
へんなの、と不思議そうな顔をして首を傾げた月子に錫也は何も言わずに目を細めるだけにしておいた。そのかわり、心の中だけで答える。
違うよ、月子、と。
きっと、自分の子供を錫也は愛せない。だって、錫也は錫也のことが好きではないのだから。むしろ、憎いとすら思う。存在なんかしなければいいのにとすら思うのだ。何よりも誰よりもじぶんのことが嫌いだ。だからこそ、自分の半身は愛せない。生物の本能としてはイカれているのかもしれない。自分のDNAを残したくないと思うなんて可笑しいのかもしれない。でも、きっと、だからこそ錫也は月子の子供なら愛せる。例え、自分の遺伝子が半分はいっていたとしても、月子の遺伝子が半分はいっているなら、それだけで。

「ふふ、」
「ん?」
ふいにくすくすと笑い始めた月子に錫也は首を傾げた。どうしたの、月子。そう問うた錫也に月子はあのね、と笑う。
「変な想像しちゃった」
「変な想像?」
錫也の言葉に月子は頷き、柔らかく告げた。

「きっとね、私と錫也の間に子供が出来たら髪は茶色なんだろうなって」

 

でも多分きっと月子は錫也の全てをしっていたりすると萌える
どうしようもないなあ、と思いながら受け入れたりとかしていると凄く美味しいですまじで御馳走様!

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